師走でございます
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 
 


気がつけば師走はすぐそこで。
陽が暮れるのが早まっている街のそこここ、
ちょっとした繁華街や公園なぞでは、
クリスマス向けだろうか、
木々やら史跡へのライトアップ込みといったイルミネーションが
早くから始まっていたけれど。

 「宵の街を堪能するなんて暇は、
  そういや無かったですよねぇ。」

寄り道厳禁というガッコだからなんて理由にはならぬ。
自家用車での登校が禁じられているのだからして、
駅前の賑わいなどなどが眸に入らなかったはずはなく。
だっていうのに、
そういうムードや風情を堪能した覚えがなかった辺り、
バタバタしていて それどころじゃなかったということだろか。
窓越しにお庭の南天を眺めやり、七郎次が感慨深げな声を出し、

 「特に何って行事、11月にはなかったのにねぇ。」

それでもあっと言う間に過ぎ去った感がと、
先日、五郎兵衛に出してもらったコタツに当たりつつ、
お気に入りのシャープペンシルのノック部分で、
あごの先をちょんちょんとつつきながら
平八が小首を傾げて見せれば、

 「……。(頷、頷)」

こちらは開いたノートに視線を落としたままで、
うんうんと頷く久蔵殿で。

 どしました、何につっかえて…
 ああ、そこは変格活用の応用ですよ。

 久蔵殿、後ででいいから
 この方程式、答え合わせしてもらえませんか?と

師走に入ればすぐにも待ち受ける期末テストに向けて、
いつもの恒例、お勉強会を催し中の三華様がたで。

 「11月かぁ。」

最近のことほど思い出せないなんて、
ずんと歳とった人みたいだねぇと。
言った端から やだもうと声を合わせて笑い合いつつ、
お勉強から ちょいと手を離し、
こちら“八百萬屋”謹製の美味しいおやつに手を伸ばす。
くるみ餡のじょうよ饅頭に さくさく香ばしい八ツ橋という、
煎茶にもミルクティーにも合う品揃えで。
愛らしい手で摘まみ上げ、
むぐむぐ、ぱりぽりと堪能しつつ、
それでもおしゃべりには支障もなくて、

 「まずの入り口が、
  世間様がハロウィンで盛り上がるのを尻目に、
  こちらは学園祭で完全燃焼しちゃいますからねぇ。」

月の頭に学園祭があるのへ向けて、
部やグループによっては夏休みも込みで頑張った
その結実を見て、さて。
あとの残りは特に大きな行事はないままに、
それこそ世間様と同じで
クリスマスまでは微妙な空洞状態になってしまうから……

 「そうですよね、
  せいぜいマラソン大会があるくらいのもんで。」

 「いやまあ、ありましたが。」

思い出すのも鬱陶しいらしい、長距離は苦手な白百合さんが、
手にしたばかりのお饅頭で口元を塞いでしまわれて。
言い出したヒナゲシさんが、くすすと微笑ましいというお顔で笑う。
運動は一通り 得意中の得意という三華様たちなれど。
駈けてった先にお楽しみが待つような
ハイキングやトレッキングなんかならともかくも、
トラック同然のコースをぐるんと一周するだけ、
淡々としんどいだけのマラソン、
実は気が短いか、白百合さんは特に苦手としておいで。

 「途中に係を置いて、
  借り物競走とか取り入れてくれればいいのに。」

 「何ですか、そりゃ。」

何か見つけて来いっていうのじゃなくて、
そうそう、そこから次の辻までを掃き掃除しなさいとかいう、
いろんなサプライズを仕掛けてあったら楽しいのにと、
突拍子もないこと、言い出す七郎次へ。
そんな、バラエティ番組の企画じゃないんだから、と。
ツッコミを入れる平八だったが、
そんな彼女も その実どこか楽しげで。

 「案外、そういうのにすればいいのにという案は、
  榊せんせえや勘兵衛さん辺りは
  速攻で何とかしてくれそうですけれど。」

そうと続けたのへ、

 「???」

おちょぼ口で八ツ橋を齧りつつ、
何の話?と言いたいか、
かっくりこと小首を傾げる紅ばらさんだったれど。

 「だって、麻薬取引絡みの仔猫は拾うわ、
  今年は今年で、久蔵殿がいきなり
  無許可の素人カメラ小僧を見つけて、
  襟首掴んだそのまま、えいやっなんて一本背負いしちゃうわ。」

大人の皆様が唖然としたほど、
相変わらずに どれほどお転婆をしたかという平八の指摘へ、

 「〜〜〜。」

そうすると ちょいとセクシャルに見えなくもない、
口許尖らせた紅ばらさん。
何か言いたそうだなというのは察せられ、

 「何ですて、シチさん。」

 「うん、そう言うヘイさんこそ、
  そやつが何処に潜んでいたかを探査して、
  急遽 撃退作戦を練り上げた張本人の癖にって。」

往路では淡々と走っていて気づかなかったものを、
遅れて通過したおり、沿道にカメラに気づいた平八が、
これはけしからんと久蔵へ位置を知らせたという段取りだったようで。
当然と言っていいものやら、
久蔵だけが叱られた訳ではなくて、
大方そんな順番だろうと見抜かれていて。
3人揃って
それぞれの保護者からお叱りを受けたのもいつもの顛末。

 「しかもそのお仲間までも、
  問題の子のスマホから画像を送り出された形跡たどって、
  一網打尽にしちゃったろうって、
  勘兵衛様が渋いお顔になってたよ?」

 「おや? そっちは管轄外のはずだし、
  何でシチさんが知ってますか?」

後日談なその上、警察のサイバー犯罪担当への
無許可の盗撮なんですよぉという、
被害者からの通報形式にしてあったので、
立件的には問題ないはずですがなんて。
遺漏がないようお膳立てしてあったことまでも、
しゃあしゃあと言ってのける恐ろしさだったそうだということ、

 「…勘兵衛様が末恐ろしいと言ってただけです。////////」

よほど焦っておいでか、ミルクティーを八ツ橋で掻き回すお嬢さんなのへ、

 「ふふーん? さては最近 逢う機会を持てたんですね?」

平八の温かい冷やかしに続き、

 「♪♪♪♪」

これは通訳がなくても判る、
久蔵までもが“善哉善哉♪”と
紅色の双眸を細めてやわらかく微笑んでいて。

 「な、何ですよぉ、久蔵殿までっ。///////////」

もうもう知らないっと、
真っ白な頬を見る見るうち、
真っ赤っ赤に染め上げて。
お膝に掛けてたコタツ布団に顔を伏せたところなぞ、
久蔵が ていっと一本背負いした青年を、
そのまま地べたへ羽交い締めにして取り押さえた鬼百合と
同一人物には到底見えずで。

 やっぱり相変わらずな方々だったようですよと、
 窓のそばから飛び立った小鳥が、
 きちぃちぃと鳴いて仲間へ伝えたように聞こえた
 冬の初めの午後でした。





    〜Fine〜  14.11.30.


  *UPは12月になっちゃいましたな。
   あっと言う間にもう師走。
   歳がいくと歳月の過ぎ去りようが速いって本当だなと
   実感している今日このごろです。
   明日から寒いぞ、皆様どうかご自愛ください。

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